江口 彰 Laboratory

分野は、“教育” “映画” “まちづくり”。次世代への取組みを分かりやすく考えてみる。

学生組織支援のあり方を考える

Posted on | 6月 22, 2011 | 学生組織支援のあり方を考える はコメントを受け付けていません。

学生活動について長年実践的な試みをしてきていますが、最近思うこととして“支援のあり方”を考えることがあります。大学生組織に対する支援というのは、一般企業や大人からみて魅力的にみえる一方で、複雑な内情や背景などがあります。ここ最近の傾向は、プロジェクトが成熟化したという我々側の時間経過に伴う新たな課題と、学生そのものの質の低下といわれる社会的な背景の問題と、2つのことが見えてきました。

前者は成熟化組織によく起こる現象が、学生組織といえども起こってしまっているということです。年数を重ねてきているプロジェクト組織は、ある程度実行することが決まっていますから前年度の模倣を計画の基盤に考えます。それが挑戦的で突発的、または奇抜なアイディアや他者を阻害し、どこか官僚っぽく、前例主義的な思考停止になりがちで進めてしまいます。また、多くの先輩が勝ち取ってきたネットワークや運営の基礎的な環境も、あって当たり前といった認識が芽生えてきます。こうしたことは大人社会の組織でもよくあるパターンであり、大学生にもその傾向は出てきています。この問題を打破するためには、リーダーとなるべき学生の関わり方がたいへん重要になってくるのですが、その負のスパイラルになりそうな組織文化をうまくマネジメントする能力というものは、学生組織問わず誰でも難しい作業であり課題であることは歪めません。そのノウハウや実行を促すためには、他者からの支援やサポートがないと、時には実行そのものを担わないと、大きな組織では学生のみで解決できず、やがて組織の存続があやふやになり、最悪のケースは消滅への道をたどることになります。

もう一方、社会背景から来る若者問題と関係して学生の質の低下について考えてみます。今社会でも問題になっている二極化の傾向は、大学生のなかでも確実に浸透してきていると感じます。学生サークルや組織のなかでも、できる人とできない人との差が大きくなってきており、どちらかというとアクティブでできる人は少数派になる傾向があるということです。そのアクティブでできる人は組織内で信用を勝ち取ってきたり、または頼りにされたりし、組織のリーダー株になるのですが、二極化した組織をまとめるのは難解な業務になりますから、ほぼ組織内マネジメントに没頭しはじめます。そうなると、組織外との接触頻度が低下しはじめてしまい、その組織は周辺から孤立する傾向が生まれます。そうなれば組織活動そのものが衰退し始めていく原因がでてきます。学級崩壊などで学校教員が精神的に参ってしまう傾向に似たような状態が、学生組織内で起こってくると、そのリーダーはかなりメンタル的に追い込まれるようになります。そしてサークル活動ですからリーダーが突如脱退しかねないわけです。そうなると混乱を極めてしまいます。

そこで最近のできる大学生の傾向は、上記のことを察してでしょうか、組織を作ってマネジメントするよりも、フリーランスのように個人で様々なプロジェクトに関わり、できる人を見つけて、そこで経験を積み重ねるといった傾向が強くなってきたと思います。その方が自分のキャリアに取ってよいという判断だと思いますし、かなり賢い選択だとは思います。しかしながら、組織マネジメントの経験といったリーダーシップ等のスキルや経験を踏むことなく、おいしいところのみの経験となりがちで、比較的経験の浅さを感じてしまいます。苦境に対する乗り越える術や、問題解決にはあまり力を発揮しないのではないか、そのように見受けられます。

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このような現象を踏まえ、大学生のキャリア形成支援を考えた場合、どういった場を作り、もしくはアドバイスの内容や大学教職員の関わり方、社会人の関わり方を持つのがいいのでしょうか。安易に、学生企画の中身やできる学生がプレゼンしてきたことだけをみて判断するよりも、もっと深いところを考察して支援のあり方を検討すべきではないか。そのように感じはじめています。

ゴールに魅力があることと“ナナメの関係”

Posted on | 6月 19, 2011 | ゴールに魅力があることと“ナナメの関係” はコメントを受け付けていません。

先日、富山大学のキャリア支援担当の先生方にお会いしました。約1時間半様々なお話をさせていただくなかで、地方の国立大学の実態をお聞きすることができ、首都圏や関西圏はともかく札幌圏もまだ恵まれている環境であることを認識しました。しかしながら、抱えている悩みが似たようなものであることは変わらないようです。

その悩みとは、学生のメンタル面で特にモチベーションについてのことに集約して意見交換を行いました。私の経験から申し上げたことは、まずはゴールが魅力的かどうか、といったキャリア支援カリキュラムの問題点を指摘したことです。キャリア教育の主眼におかれていることはプロセスを考える領域であるから、インターンシップのように、どこかの企業に体験することや研修するといった中身を考察する場合が多く、何を目指しているのかをあまり問わない傾向にあります。その研修先の企業が何を目指しているのかは、あまり問わないわけです。

学生の視点から考えると、最先端技術を持っている企業や、真新しい企業、よく知られている企業、といったような体験先があったとしても、その体験プログラムのゴールは魅力的に映るのでしょうか。やはり就職しない限り中身の深い体験はできないと思います。高校野球で甲子園を目指すようなレベルでの気持ちの入れようは、なかなか生まれないでしょう。ですからモチベーションを問題にする場合は、インターンシップや従来型のキャリア支援プログラムでは限界を感じてしまいます。もし仮にうまくインターンシップでマッチングでき、モチベーションや意識変化を起こさせた場合は稀なケースで、多くの大学生にそのタイミングを与えるのは至難の業ではないかと思うのです。

そこで自分が行っていることは、サークル活動の目標であるゴールを魅力的なものにすることから考えて、プログラムを組みはじめたことをお話させていただきました。例えば、北海道大学で行っている映画関連プロジェクトは、そのもののゴールに魅力を感じるような発想を構築してスタートさせています。大学に映画館があるって素晴らしいとか、本物の映画を作ってみるというのは面白い、といったような事柄は一般学生がイメージしても魅力を秘めていると思います。その他には、自分たちの通っている大学に対して不満があるならばそれを解決するという試みをゴールにすると、それも彼らにとって魅力的に映るものを作り出せることもあります。例えば大学祭がつまらないと思うのならば、面白いものに変えてみようというようなゴール設定です。

そしてゴール設定がある程度決まったら、キャリア支援的なプロセスについて考えていくことになります。よくあるケースは、面倒くさいからやらないというパターンです。学祭はつまらないけど、計画を考えたり実行するのは面倒だし、大変そうだし、そんなことやるなら学祭はつまらなくたってよい、といった考え方をする、あきらめるもしくはがんばらない人です。他には、学祭を変えるのにメリットがあるとやるというパターンもいます。例えばバイトのようにお金をもらえるならやります、というような人です。これもややズレた考え方を持っていると思います。今の社会は、個人の私的メリットだけを求めて成り立つほど資源の余裕が無くなりつつあります。ましてや大学祭ですから、金銭的メリットを求めるパターンは友人知人が離れていくでしょう。こういった人をもっとアクティブに主体性を持って挑戦することや道徳や倫理観の良識を得た社会人に変えていこうというそのプロセスこそが、キャリア教育の本丸といってよい部分になるところだと思います。

この意識変化への流れは、NPOカタリバで行っている“ナナメの関係”といったコミュニケーションの場が効果を生みそうであると感じています。カタリバは、高校生と大学生といった立場のコミュニケーションの場ですが、サークル活動ですから先輩やOBOGとの対話になります。それは親近感があるので、気づきやすく、リアリティを持って思考にしみ込んでいきやすくなります。ましてや課外活動ですから、体験頻度は1年〜4年といった長いスパンでコンスタントに起きます。インターンシップのように長期といった半年よりももっと長いスパンで体験でき、これは学生生活の日常にしみ込んでいくものです。しかしながらこの場も魅力的な先輩やOBOGがいれば機能しますが、必ずしもコンスタントにそういった先輩がいるとは限らないわけです。そこが現状の問題として抱えているという話をさせていただきました。

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もう一つは、大人社会でも魅力ある人との遭遇があまりないのではないかという話もさせていただいています。プロジェクトを進める上で様々な社会人と学生が接点を持ちますが、がっかりするといった経験が多いのも事実です。そして震災の対応などのニュースも含めて社会そのものに魅力を感じていない若者が多くなっているのも事実です。今、学生たちの世界よりも大人社会のほうが問題なのではないか。だからこそ、学生は何かしら一歩を踏み出せない、出そうとも考えない、そういった問題をお伝えして時間切れとなりました。

学生の質は下がっているのだろうか?

Posted on | 5月 19, 2011 | 学生の質は下がっているのだろうか? はコメントを受け付けていません。

現在、北海道大学短編映画第3弾(北大オムニバス四部作)のプリプロダクション真っ最中です。今回も北大生を中心に学生が集まり、プロの監督・美術・衣装・コーディネーターと共にクランクインまでの準備を重ねてきています。脚本も決まり、本格的な準備段階になりはじめ来月下旬には撮影に入ります。この度は、株式会社ニトリさんからも特別協賛を頂くことになり、前作よりもより注目度の高いなかで製作が進んでいくことになります。作品詳細は、もうしばらくあとに公開されることになっていますので、公開準備も含めて学生の働きに期待しつつ、一緒に試行錯誤して積み上げているところです。

さて、前作から約1年半ぶりの撮影に入りますが、今回の学生スタッフは一新され、過去の作品制作に関わったことのない新人さんばかりです。経験がないためでしょうか、コミュニケーションに伴う問題が多発しはじめてきました。

創造性に富む映画制作の現場のなかで、複数名が関わり組織的に作品を生み出していくわけですが、そのトップに立つのは映画監督です。すべては映画監督に情報を上げて判断します。映画監督はプロデューサーに渡された条件範囲のなかで意思決定をしていくわけですが、この体制を理解していないのでしょうか、あやふやな状態になり、組織内のコンセンサスがとりにくい状態が生まれてきました。映画監督から、何を託され準備しているのか。そのあたり、任されている範囲を理解しないで場当たり的な動きが頻繁に起こりはじめています。

例えば、脚本からロケ地を確定する際に、ロケ地の決定確認など監督と打ち合わせることを行ないますが、それよりも先に、ロケ地の撮影許認可を催促するようなメールが突如として出回ってきます。まだその場で撮影するかどうか、監督も知られていない情報が確定したかのように情報が回ってくるとチームの中で混乱が生じます。他には、映画に出演してくれる人を探すために学内で色々な人に会っていくのですが、日本人はシャイですから、アプローチを間違うと出てくれる人も出てくれないとなります。よって説明の手順や方法を考えて進めるべきですが、唐突に「映画に出てほしい」と伝えようとする場面にも出会います。

このように組織内でどれくらいの自由度と決定権があるのか、相手がどういった印象を持つのか、イメージできない子たちが増えてきたように感じています。そして、こうしたコミュニケーションによるミスを少なくするための動きというのも、なかなか自発的に起きてきません。相談や連絡や報告が圧倒的に少ないので、こちらから歩み寄って確認するべきことが多くなってきます。先日も、過去何作も学生と映像制作を経験してきている仲間とのやりとりのなかで「学生に対してこういったストレスを感じるのは、はじめてのケース」という言葉が印象的でした。組織で何かを成し遂げるためには、どういったコミュニケーションが必要なのか、そこを学習されないで、大学生になってきたと考えられます。

他の学生団体でも似たような現象がポツポツ現れているようです。先月の新一年生向けのイベント時期でも、仲間と一緒になって新入生の出会いを作り上げていく過程の苦労を聞きました。その学生によると、企画運営するチームメイトが連絡しても連絡をしてくれなく、誰が何をどうやって役割分担されているのかも分からず、指示系統がバラバラで、最初から自分がすべてやらせてもらう立場だったらもっとスムーズだった、とストレスを感じていたようです。仲間で目標を掲げてそれをスムーズに進めてことを成し遂げる、その過程を作り出せない学生や、仲間の活動に貢献しない学生が増えてきました。こうした学生に対して、もし自分が企業の採用面接官だったら採用する?と聞くと「今就職難とか言っていますけど、私たちのレベルがそもそも低いのですね。」という言葉が現状を素直に表していると思います。これが北海道大学という日本のなかでもトップレベルの学内で起こっている現象で蔓延しているとなると、日本の将来にとって危ない兆しであるようでなりません。

確かに昔も今もこうしたコミュニケーションべたな学生は存在しました。私の経験では、遭遇率が高くなってきたという危機感があります。さらに、これらの学生が同世代や先輩後輩等のコミュニティのなかで育まれていくケースが多かったように思います。しかし、そうしたコミュニティも昔より雰囲気が変わってきてしまい、ゆるいと感じてきました。

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今、こうした状況のなかで何を支援すべきで、どういった学習機会を生み出し、経験を通じた成長を促していけばよいのでしょうか。彼らの子どもの頃から大学生までの家庭や地域、学校環境も変わってきていることと、今回のケースとの因果関係は分かりませんが、現場感覚では相当影響を受けているだろうと考えさせられています。

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