江口 彰 Laboratory

分野は、“教育” “映画” “まちづくり”。次世代への取組みを分かりやすく考えてみる。

「札幌人図鑑」新しい学校教育のスタイルを目指して

Posted on | 12月 18, 2012 | 「札幌人図鑑」新しい学校教育のスタイルを目指して はコメントを受け付けていません。

かなり月日が空いてしまいましたが、ページのメンテナンスを少しだけ行い再設定しました。その流れで下記の記事をアップします。

2012年9月10日にアップして頂いた「札幌人図鑑」。カタリバについて少しお話させていただきました。インタビューアーの福津京子さんとは、沖縄の演出家平田大一さんをお招きした公演会をプロデュースしたさいに司会をお願いしたことがきっかけで、その後FMアップル(コミュニティFM)に何度か出演させて頂いたりしていました。そして、今年の4月から札幌で活躍する人を毎日お届けする「札幌人図鑑」を立ち上げ、この度出演させて頂いいたという経緯です。

札幌人図鑑は、3つのキーワードから話しを組み立てていくということで、今回のキーワードは以下の3つです。それぞれ動画でアップされていますので、ご覧頂ければと思います。特に、カタリバを実施するにあたって練習風景の映像が組み込まれていますので、そのあたりはご覧頂きたいところです。

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チェッキング、サンプリング、レクチャー


大学生の部活動やサークル活動


新しい学校教育のスタイルを目指して

「カタリバ」の凄さが分かってくる。

Posted on | 3月 14, 2012 | 「カタリバ」の凄さが分かってくる。 はコメントを受け付けていません。

ずいぶんと久しぶりのBLOG記事を書いています。前回の書き込みから「カタリバ北海道」の取り組みが活発化し、大通高校の夜間部・長万部高校・岩内高校・札幌月寒高校と実施してきました。各地の地方紙面で取り上げられ、NHK北海道さんにはニュースで特集を組んでいただき、北海道でも着実に浸透しつつあります。明日(3/15)には、旭川東栄高校、来週(3/22)は上士幌高校と続きます。カタリバの数をこなすと、様々な視点でこの教育カリキュラムの完成度の高さや可能性を感じることが多く、様々なことを整理しつつ考える視点が多様であることが分かってきます。

実施校が増えてくると、高校による校風の違いがかなりあることや、地域による違いも大きく、高校教育と一括りで考えるべきではないことがだんだん分かってきました。また、進路指導として実施したい高校とメンタルケアの類い(保健体育)の時間として実施したい場合と、大きく二つのパターンがあることも分かってきました。その実施意図から教師サイドの求めてくる要望も変わってくることが分かってきました。

一方で、高校生との対話を通じて学校によって意識や興味関心についての違いも、経験的に分かりはじめています。最も意外だったのは札幌月寒高校企画です。はじめての進学校企画とあって、それなりにうまくいくだろうと思って臨みましたが、予想とは裏腹にたいへん難しい現場でした。学生チームのそのほとんどは進学校出身の大学生です。そのため高校生の立場を理解して臨めると思っていましたが、思うように展開しませんでした。それはなぜなのか。そしてそれを乗り越えるために事前研修など我々の取り組む内容をどのようにすべきなのか、今その議論が学生間で起こりはじめています。

大学生への教育効果も徐々に見えてきました。特にサンプリングに関わることが非常に大きな変化をもたらすことが見えてきます。カタリバ実施中にサンプリングの効果が高校生に対してあるという実感を持つ大学生が多くいますが、それは大学生にとっても大きなものだと言えます。開発に伴う作業の過程では、学生仲間とともに自分の過去をさらけ出すことことからはじまるため、自己を見つめ直し客観的視点を浴びながら何度もブラシュアップしていくことになります。それはまさに自己の再発見や自己内省に繋がり、徐々に自分に自信を持ちはじめる、もしくは自己変革を起こすきっかけが生まれてきます。またサンプリング開発途中段階で、研修の場において多くの大学生の前でプレ発表する機会を設けます。この場において人の前でプレゼンする度胸を作ること、さらなる視点を浴びることが、成長を加速させていくことにもなります。

傾聴した学生への影響も大きいものがあります。共感すること、自己と仲間の比較から自己変化を呼び込む内発的な動機付けを植え付ける効果がどうもありそうです。そのなかからサンプリング開発に志願する学生も生まれてきます。活動への態度が変化する人もいます。開発する側にまわるとスパイラル的にその効果が高まりはじめることもありました。もちろんすべての学生がうまくいくわけではありませんが、開発に失敗したとしても成長を垣間みることができます。リトライがいつでも可能であることもポイントのひとつだと言えます。

運営面で関わる学生の成長や気づきの状態は、他の学生団体と同じようなことがいえ、インターンシップ等の効果と比較的似ている部分もあります。しかしながら、カタリバの内容そのものである“サンプリング”や“チェッキング”の精度を上げることへの行為が、今まさにこれからの時代に必要とされる能力に直結しているものと重複していることが多く、そのため他の活動を凌駕しているポイントなのだと思います。これらは二重の意味が重なりあってそれは何倍にもなっているような感じがします。

全く違った視点で見ることもできます。例えば、大都市以外の地方地域に対して、カタリバが貢献する可能性を持っているかもしれない、そのことに気がつきはじめました。限界集落の最終防波堤は地域の学校の存続がポイントになります。高校がなくなる地域は、限界集落に一歩近づきます。若者がいないところに未来はありません。大学がなく高校しかない状態である地域に大学生が赴く意味は大きいものと感じました。

また我々カタリバの学生団体は、授業終了後にその地域で食事をしたり温泉に入ったりとレクレーションの時間を設けます。これは時間的にも夕食や昼食時になることから、ちょっとした旅行気分を感じてもらう演出を施すことで、授業の実施も含めてトータル的にまた参加したいという気持ちを引き出すことや、リラックスした状態で振り返りをさらに促進させる効果を考えて行なっています。そのとき地域に落ちるお金もメンバー数が多きければちょっとした経済効果もあり、さらに地元民とのコミュニケーションが備わると、一時の精神的な活力が生み出されることも分かって来ました。これはゆうばり映画祭のボランティア効果と似たようなものを感じます。その地域で大学生とふれあう機会がほとんどないでしょうし、大学生にとっても地方の生活に近づく体験がそれほど多くないため、地方情勢についての気づきの場にもなっているというプラスαがあるようです。まだ具体的な地域との交流の仕組みができているわけではありませんが、その可能性を感じるちょっとした機会に遭遇することがあります。

実施する前と実施してみて気がつくこと、それも複数回重ねることで見えてくること、カタリバに隠されている効果は思った以上に大きなものかもしれません。

※「サンプリング」とは、カタリバの授業のなかで実施される一つのコーナーで、大学生が自分の体験談を物語風に語る行為。多くの大学生は、スケッチブックを持って紙芝居風に語る。

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※「チェッキング」とは、授業のスタート時に行なうコミュニケーションを円滑に行なうためのイントロダクションのコミュニケーション行為。グループワークをしやすい状態に持ち込むコミュニケーションの時間帯のことを特に言う。

大学生は研修を受けてから「カタリバ」に参加

Posted on | 10月 17, 2011 | 大学生は研修を受けてから「カタリバ」に参加 はコメントを受け付けていません。

2011年10月13日市立札幌大通高校で「カタリバ」が実施されました。北海道で本格的な「カタリバ」が開催されるのは初となります。同年3月に旭川東栄高校で行なわれた北海道初の「カタリバ」は、本家NPOカタリバと我々が立ち上げたNPO法人CAN(カタリバ北海道)との恊働開催で、実質色々と本家から指南を受けて参加した状態でした。今回は、自分たちだけで企画運営した最初の事例になります。本家同様に、我々も学生に対して研修を実施し、かなりの時間準備を重ねて約100分の授業を生徒に向けて運営しています。その学習効果や準備の中身について、見学しているだけでは分かりにくいものですから、解説をしておきたいと思います。

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著書『「カタリバ」という授業』にも掲載されていますが、高校の実施授業時間の中身の構成は、会場となる体育館の入場から退場までを一つのカリキュラムとして3つの段階を踏みます。「前半のチェッキング」→「中盤のサンプリング」→「まとめの座談会から退場」です。研修で最も力を入れるのは「チェッキング」と呼ばれる、はじめて出会って打ち解けるまでの時間帯におけるコミュニケーショントレーニングです。日常でもビジネスの世界でも初対面の人と出会った時、自己紹介してさぁ会話を始めてください、という流れというのは、実際の場面でなかなかスムーズに起こりえません。そこをしっかりデザインし、イメージを作ったり、コミュニケーションの工夫など練習を重ねて身につけていきます。

人との対話のなかで会話が途切れる気まずそうな間が流れる経験をよくしてきていると思います。様々なタイプの人がいるように、初対面が得意な人もいるでしょうが人見知りの人もいるでしょう。そういった初対面と人と向き合うこと、しかも短時間で対象は高校生となる、このシミュレーショントレーニングが本番で最初の時間に会話をスムーズにさせる確率を上げていくことになります。最初でしくじるとその後の会話が弾むことがなくなり、授業の効果がかなりなくなってしまうことになります。ですから、この最初の段階のトレーニングを最重要視しているわけです。

またもう一つ大事なこととして、単なるコミュニケーショントレーニングだけではありません。集計分析班の学生スタッフが、実施校に事前のアンケート調査や先生とのヒアリングを行い、実施校のイメージを参加学生にプレゼンテーションをします。そこで実施校の想定イメージを作り上げることや共有することを計っていきます。ここで大事なことは、過去の経験した学校との比較から来るイメージです。今回大通高校の実施には、旭川東栄組が10名ほど参加していました。よって、このディスカッションの中心は彼ら経験者組で、東栄高校の経験を踏まえた意見や想像するイメージを語っていきます。それを今回初参加の学生はその議論を聞くことから、自分が現場でどう応対すべきか、イメージを膨らませ仲間と共有させていくわけです。これは回数を重ねれば多角的にイメージを膨らませることが出来ます。次回行なわれる長万部高校(2011.11.1実施)の研修会では、旭川東栄高校と大通高校が比較対象校になり議論はより多角化するでしょう。これが経験継承に繋がり、より高度なイメージがされることになります。

このディスカッションでの共有イメージが、先ほど述べたシミュレーショントレーニングで活きていくことになります。仮想高校生役を演じる側と担うべき学生側とが一つのグループになり、お互い役柄を交換しあいながら、はじめて出会った想定でどんどんトレーニングをこなしていくわけです。そしてこのトレーニングと“振り返り”といわれる、そのトレーニングのやりとりの中身を徹底的に検証する自由対話をセットで行なっていきます。この繰り返しと本番での実践経験が、カタリバに参加する学生の成長機会にもなり、高校生にきっかけを与える大きなエッセンスを生み出していることになるのです。

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