江口 彰 Laboratory

分野は、“教育” “映画” “まちづくり”。次世代への取組みを分かりやすく考えてみる。

北海道大学、それぞれの映画系活動

Posted on | 7月 23, 2010 | 北海道大学、それぞれの映画系活動 はコメントを受け付けていません。

北海道大学では「映画」に関わるサークル活動が、私の知っているところで3つ存在しています。一つは昔から伝統のある「北海道大学映画研究会」通称、北大映研。もう一つは、私が2006年に立ち上げた大学内に常設化の映画館設立を目指した「北大映画館プロジェクト」。そして、OBOG等社会人と恊働して短編映画を作り上げる「北大ショートフィルム製作委員会」(昨年末からこの名称に統一)です。この組織も私が2007年に設立し作品を作る時に時限的に稼働しています。

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それぞれには目的と役割が違っており、北大映研は大学生のオリジナル映画を作ることが目的として、他大学にもよく見られる一般的なサークル活動です。他の2つは、キャリアを意識したプロジェクト型サークルと私が呼んでいるものに分類します。

プロジェクトマネジメントにおける『PMBOK』によると「プロジェクト」とは、「はじめと終わりがあるもの」と定義しています。北大映画館は常設化映画館を目指すために、年に一度約5日間誕生する期間限定の映画館を生み出し、映画祭のようなイベントを展開しています。このイベント構築を最大の目標にして1年間の活動を行うという仕組みにしました。また、ショートフィルムは製作の発案から製作完了し上映などまでを一連のパターンにすることで、一つの作品ごとに完結しています。このプロジェクトのなかに、目標を設定しその目標を遂行するために、チームとして取り組む姿勢を重視しながら、成功するための様々な資源を構築したり集めたりします。この過程におけるコミュニケーションの質を上げ、かつ個人の能力を引き延ばし、様々な失敗と成功体験を積んでもらうことで、目的を成し遂げる体験を生み出しています。

普通のサークル活動も同じようなプロセスがあると思いますが、大学生のみでないところが大きなポイントになります。北大映画館もショートフィルムもかなりの部分学生のみではできない構造になっており、他者協力が絶対必要になっています。それらステークホルダーとのコミュニケーション、協力者への魅力付け、期限に対する責任、チーム内でのコミュニケーション、そして企画や運営への創造力、これらを発揮して成し遂げなければなりません。

そしてそのプロセスの先の組織目的が、常設化の映画館であり、クオリティの高い短編映画なのです。それぞれの共通目的は「自ら学ぶ大学の価値創造」です。日本一のキャンパスである北海道大学に、映画館がありオリジナルの映画があることへの魅力やわくわく感に共感できる、それを原動力で大学生が先頭になって活動を促す。「今年の映画館では何を上映し企画するか?」「次回作はどのような作品にしようか?」と、その都度、組織内議論が自発的に活性化され個性や協調性を考える時間をかなり費やすことも大学生の特徴であり、社会人へのステップになります。このように、組織活動の目的への出会いが最重要ポイントだと考えています。

「映画」とは、この目的への出会いという意味において相性のいい分野である、そう確信しているところです。

北大映画館プロジェクト ホームページ
北大ショートフィルム製作委員会 ホームページ
北海道大学映画研究会 ホームページ

「キャリア」とは?

Posted on | 7月 22, 2010 | 「キャリア」とは? はコメントを受け付けていません。

キャリアとは何か、少し分かりやすく解説してみましょう。

キャリア研究者のいう「キャリア」と、一般化している「キャリア」との意味はやや違います。一般化されているキャリアは、国家一種に代表されるように出世的な地位や収入など、ある程度ハイクラス層へのイメージが強くあります。就職や転職などのキャリアパスでいかに高いところへ自分を導くのか。そのために「キャリアアップ」という言葉が定着しています。「経歴」ともいうように「結果」を表すことが多いと思います。

しかし研究や学者の世界では「キャリア」とは誰にでもあり、上下などいっさいないといっています。仕事と人生の時間の流れの、その「プロセス」が「キャリア」であるというのが共通概念になっています。

学校教育におけるキャリア教育の浸透は、やや一般的な解釈に先行されるように行なわれてきました。この流れは、ITに代表されるように産業の構造変化や起業ブームにあおられる形で顕著になりはじめ、その後ニート問題など若年者の雇用問題がクローズアップされ、そして学校教育が少しずつ危機感を持ちはじめたように移り変わっていきます。そのため文部科学省と厚生労働省と経済産業省がいう「キャリア教育」には、微妙にスタンスの違いがあり、その違いによりますます一般的には複雑化した印象を見せていると思います。

文科省の進めるキャリア教育は従来の進路指導の延長線上で行ない、厚労省はニート対策など若年者労働問題として行なわれ、経産省は産業人材育成や経営者を育てることに興味を強くおいています。このように霞ヶ関でも分裂した状態が今も続いています。

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しかしながら現場で行なわれることは、どのアプローチからでも本来変わらないものというのが本質的にはいえると思います。授業を受ける子供たちもどれかを選ぶというようにはいきません。それぞれの考え方には一長一短があるでしょうし、それらを検証・考察し、本質的な意味に即したカリキュラムを作り上げる必要性を強く感じています。そのためまずは具体的現象の現場を作る、その立ち位置に身を置くことが重要ではないかと考えています。

「教育×映画×まちづくり」への道のり

Posted on | 7月 22, 2010 | 「教育×映画×まちづくり」への道のり はコメントを受け付けていません。

自分のライフワークは「教育」「映画」「まちづくり」です。多岐にわたる活動をしているため、何をしているのか分かりにくく説明もしにくい毎日。自己紹介を求められたとき、自分の仕事を説明するのに一苦労をします。しかし興味が散乱しているのではなく、しっかり持論を練って活動を限定しています。

テーマは「次世代を育成すること」。その“人づくり”を考える上で、重要な視点は “コミュニケーション活動”だと感じています。そしてそのための“具体的な現象”への関与が必要だと考えました。

私は、大学院で「キャリア」にまつわる周辺の分野を勉強してきました。主に教育学の分野からのアプローチでしたが、経営学・社会学・政治学・心理学など分野を横断して様々な視点も学んできました。しかし理論だけを勉強したところで、それは理解したことにならないと思っています。アウトカム、つまり実際に社会にどういう影響を与えたか、この尺度で考えた場合、実践的現象を起こさせてリサーチを試みることが重要であるという考えだったのです。そのとき具体的分野に迷っていた矢先に、北海道大学のクラーク会館に映写機が眠っているという話を聞きつけました。ちょうど私はご縁があり、コミュニティシネマの運動に関わりはじめていた時でした。北海道大学に映画館を復活させる組織的な活動を通じて大学生が成長する流れを生み出そうと考えたのです。

一方で、コミュニケーションの分野における映像の位置づけは年々高まってきていました。ソーシャルメディアという言葉に象徴されるようにテレビ・放送・メディなど業界の変化は、間違いなくほとんどの人が影響を受け、生きていく上でますます重要な分野になってきています。しかしこれらをしっかり学ぶ場がありません。それぞれ「教育」と「映像」という異分野が一つの線に繋るための具体的な事例が「北海道大学で映画館をつくる」等の学生活動になってきています。

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そしてもう一つの分野「まちづくり」は、様々な問題による地域崩壊がクローズアップされてきました。こと教育の問題では、小中学校と地域との関係性が重要視されるなかで、それらの地域コミュニティの取り組みが、人を育む環境として再検証されてはじめています。大学院修了後、ちょうど札幌市琴似地区の動きへの参画の話が来たのも何かの縁ではじめたことですが、北海道大学での経験を地域に置き換えてみる試みの必要性を感じていました。

また「映画」と「まちづくり」という接点では、まちおこしの一環として映画ロケの誘致活動も盛んに行なわれるようになってきており、文化や産業、観光等の分野において、各地域のフィルムコミッション活動が顕著に現れています。

このように、3つの視点の重なる状況を現場で創造し、“人づくり”といった視点を軸に考察を試み、実践を積み重ねていく取り組みは、今後ますます重要になるでしょう。その先駆けとなる現象をここ札幌で起こしていくのが、まず第一歩だと考えています。

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