江口 彰 Laboratory

分野は、“教育” “映画” “まちづくり”。次世代への取組みを分かりやすく考えてみる。

徳丸理事長になろう(映画『コクリコ坂から』より)

Posted on | 8月 18, 2011 | 徳丸理事長になろう(映画『コクリコ坂から』より) はコメントを受け付けていません。

昨日(17日)、子どもたちを放射能から守る福島ネットワークが主催で「子どもの声を政府に届けよう!」が開催されました。その模様が、俳優の山本太郎さんの動きがきっかけなのでしょうか、ニュースとして流れています。

memoir essay

子どもたちからは「福島県民よりもお金が大切なんですか?」「福島の子どもたちは、プールにも入れません。マスクをして、登下校をしているのに、基準値を何十倍も引き上げて、どうして安全と言えるんですか?」「こんなことになった、原発がわたしは大嫌いです」子どもたちから向けられるなか横一列に並んだ内閣府、文科省、保安院の10名の“おとな”たちは、うつむくばかり。(シネマトゥデイより一部抜粋

子どもの教育を考えるためにはどうしたらいいのでしょうか。日頃、日本各地の教育現場などで試行錯誤されているさなか、このような“おとな”の態度が報道で流れると、一気にトーンダウンし、子どもには悪影響を与えているでしょう。今の子どもたちや若者問題は、このような大人社会の態度からもたらされているのではないか、そう思う事態が多くあります。

現在上映中の映画『コクリコ坂から』のなかにその真逆と取られる態度を示す大人「徳丸理事長」が登場します。内容に触れるとネタバレになってしまいますので、是非作品を見て確認してほしいのですが、忙しいさなかアポなしの名も知らない高校生に時間を割いてよく聞きすぐに動くその態度を、主人公たちは「こんな大人もいるんだな」と部屋をあとにします。

これまで私は活動家として様々な社会人といわれる“おとな”に出会ってきました。それらの方々は、上記のような霞ヶ関の大人なのか、徳丸理事長タイプなのか、それでない違ったタイプなのか。残念ながら、徳丸理事長タイプの遭遇率は低いのではないでしょうか。そのような感想を持っています。今の子どもが大きくなって逆の立場になったら、徳丸理事長のように未来の子どもたちを相手することができるタイプの人間になるのでしょうか。そこも気になるところです。

こういったことは近年多発している現象なのでしょうか。それともメディア等の情報技術やインフラが整備されたので、明るみになっただけなのでしょうか。映画『コクリコ坂から』の1960年代前半に「こんな大人もいるんだ」という表現からしても、当時から珍しいのかもしれません。しかしながら、今特に震災等が最たる例ですが、徳丸理事長のような“おとな”が社会に求められていると思います。

先ほどの記事に戻りますが、子どもたちの話しを聞いた役人側からすると決定権のない人たちなので“持ち帰る”という返答ばかりだったといいます。参加した役人が人間として個人という気持ちと、組織というなかでの意思との乖離はあるのではないか、そういった意味合いも読み取れる記事内容になっています。このシステムや構造の問題はつきまといます。

組織の意思に個人の思いをぶつける態度、これは子どもの頃から学ぶべき一つの習慣的態度です。しかしこれはわがままを言うという意味ではなく、思いをぶつける方法を学び、うまくやるべき手法を学習することにあります。相手側の意思はどのように形成されているのか、自分たちの主張は客観的(科学的か哲学的かなど)に見てどうなのだろうか、相手と自分以外に関係者はいないだろうか。こうした視野と、話し方等のプレゼンテーション能力も必要でしょう。そして記事の最後にも書かれている「子どもたちのために、勇気を出して戦ってください」というように“勇気”が必要になってきます。勇気をもって動くと、経産省の古賀茂明氏のように組織内から袋だたきになってしまう。(しかし有名人になってくると自然と周りが守り始める社会的雰囲気が形成されはじめています)ですから、そのときの覚悟と乗り越える術を考えていくことになります。これはやる側としてはかなり難度の高い行動になるでしょう。

徳丸理事長は、映画のなかのセリフでも垣間見えますが、大人になってからそういった人格や行動形成が出来たわけではなく、若い時に色々やっていた人物だという描写があります。やはり、10代から20歳前後の経験が最も大事な時期なのでしょう。この時期に、徳丸理事長タイプの人間に引き合わせてあげるような環境づくりが、特に子どもの世界に求められているのではないかと思います。そして、その子どもたちが未来の子どもたちに対して、徳丸理事長のような態度をもって接することができる“おとな”になってくれることで、社会が成り立つのだと思います。

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