江口 彰 Laboratory

分野は、“教育” “映画” “まちづくり”。次世代への取組みを分かりやすく考えてみる。

“まちづくり”が抱える4つの視点。

Posted on | 8月 30, 2010 | “まちづくり”が抱える4つの視点。 はコメントを受け付けていません。

「街を元気にしたい」「地域をよくしたい」とよく聞きます。“まちづくり”と一言で括られるように言われていますが、いくつかの視点から問題点を整理して考えるべきだと思います。この一年数ヶ月あまり現場を通じて「地域経済」「高齢化」「文化教育」「安全」の4つの分野から考えてみることが重要であると思います。

essay on freedom

地域経済が疲弊してきたという視点でよくいわれることは、外資系の大型スーパーが襲来してくると、地元の商店街が成り立たなくなるというケースです。そして、本社機能が首都圏や他の地方中心都市にあると法人税収で吸い取られる仕組みになっていることや、これらに連動する形で雇用が失わるか、より低所得になるということ、これら3つが考えられると思います。一部の地域では、北海道の炭坑の街のように基幹産業がなくなるというケースもあります。

2つに、高齢化については地方に行けば行くほど高まっていますから、人口減少社会に対応し始めることを考えなければなりません。高齢化に伴う問題は、孤独死や高齢者介護への対策を地域でどれだけ担えるのかが試されています。行政サービスの限界は、生存確認ができずに戸籍上生きている人がたくさん出てきたニュースからも垣間みることができます。また人口減少社会は一人当たりの所得が上がらない限り税収の減少を意味しますから、より多くの社会福祉予算を捻出できない以上、地域のネットワークで乗り越える環境が必要になってきます。

3つ目に文化・教育についてです。ある特定地域に学校がなくなると限界集落へのカウントダウンが一気に加速化します。学校がないことは子どもがいないわけですから、近未来にそこには人が住んでいないという予想できる最悪の事態に繋がっていきます。そして、昔は子どもが地域との関わりで学習できる環境が多くありました。盆踊りやお祭りへ家族共々関わりコミュニケーションを通じて人間関係形成などの学びや気づきに影響を与えてきましたが、これらの運営が立ち行かなくなってきています。家族構成の変化や共稼ぎなどで、これまで家庭内教育で得られた内容も学校や地域に押し付けられていることが、結果として出てきています。

次に地方が抱えている公共空間である会館等の利活用も含めて、地域文化や教育面での梃入れが必要になってきました。上記の地域教育環境を進めるためにも公民館などの空間を使うことが行なわれつつあります。そこでは、高齢者へ向けた生涯学習の機会を作ることもはじまり、健康を維持し、医療費削減等の効果も期待していくことになります。

最後に安全の問題です。防犯に対しても近所付き合いが深い地域は不審者の発見など、何かしらの対策を地域ネットワークで乗り越えてきました。お隣さん同士を知らない生活空間であれば、事件が起こらないと明るみにならないことが多く発生しています。犯罪の多様化や複雑化への対応を警察にお任せしても防げないことが多くなってくると考えられます。

これら4つの視点の関係性をよく観察し、問題解決アプローチを練り実行することが求められます。しかしながら、これらに寄与する行政セクションやNPO・企業もある特定分野を中心に活動しますから、総合的に問題解決をする人や組織がほとんど存在していないことになります。商店街は経済関連の心配をしますし、町内会は街の安全や高齢化のことを気にします。家族はその家族世代により、子どもの心配や高齢者の心配などそれぞれ関心を持ち、地域の学校は学校教育の視点だけに関心を持ちます。NPOは事業内容によりその分野を一番と考えるでしょう。これらの思考や視点を考えるのは当然のことです。これらを包括的に受け止めるべき行政組織は、内部組織で縦割りになり所轄が違うということで関係分野しか扱わないため、たらい回しにされることが多く、地方議員や組長は選挙の支持団体により、ある程度の分野に偏りを持つことが多いと思われます。

またこれらの4つの分野に対して一気に問題解決を図るのか、段階的に計画すべきか、その順番や手法は何か、これらは地域事情も加味しながら組長や担当行政の計画力や判断力と解決アプローチを行なう現場でのリーダーシップが大きく影響します。しかしながら、こうしたリーダーシップ能力を行政職員が何処で身につけ経験し磨き、そして実践としてまちづくりに実行するという流れが生み出されるのでしょうか。

社会イノベーションを促進し、地域コミュニティのソーシャルキャピタルを高める体制と仕組みを、関係各省庁の壁を乗り越えて、政府一体となって整備・推進することや、政府、企業、NPO等が協働で社会的活動を担う人材育成と教育の充実を進めることが重要であると考える (「新しい公共」宣言2010.6.4から抜粋)

この人材育成は、コミュニケーション能力の高い、それもより高度な人材が各自治体に数名以上配置され、それを活かせる組織や組長がいるという構造にならないといけません。この道のりは遠く険しいというのが実感です。

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